コ・クリエーション(共創)とは、複数の関係者が集まって、共通の目標達成のために商品や成果を生み出すプロセスです。新著「The 3rd Paradigm(第3のパラダイム):A Radical Shift to Greater Success」の中で、共著者のハイディ・スコット・ジュスト博士、ダワ・タルヒン・フィリップス氏と私は、事業を成功に導く共創の5つの型について概要を述べています。
外部の企業や個人との協働を始める前に、自社の運営についてしっかりと理解していることが極めて重要であることを強調しています。私たちが「The Four Knows(4つの理解)」と呼ぶ4つの要素がビジネスで成功を収めるために重要である理由を本の抜粋から説明します。
理解すべき4つのこと
あなたが共創の5つの型の何れを使うにしても、成功のために以下の4つのことを全て整える必要があります。
正しく焦点を合わせる
正しくプロセスを定める
正しくコミュニケーションを取る
正しく実行する
正しく焦点を合わせる:お互いに望む成果を定める
共創に関わる全ての人は、一体となって同じ方向にボートを漕ぐ必要があります。全ての人がお互いに望む成果に焦点を合わせる必要があることを意味します。みんなが一致して取り組まなければ、最悪な事態に陥ることになります。私たちは4,200名の事業家を対象に調査を行ったのですが、ある回答者が、チームワークが効果的に機能しなかったことでイベントマーケティングを行おうとしたリーダーの試みが妨げられてしまったという話をシェアしてくれました。「私たちは、なぜそれを行うのかについてコミュニケーションがうまく取れておらず、そのイベントをチーム全体の一部として位置付けるための意見を得ることができなかったのです」
お互いに望む成果に焦点を合わせるために、全チームメンバーが「なぜ」を共有していることが求められます。共創のリーダーは、多様なステークホルダーが集まっていたとしても、効率的かつ効果的、そして創造的に共に取り組むことができるよう、一連の質問を通してチームを導いていくことができるものです。
このプロセスによって、焦点を正確に合わせやすくなります。求める結果の定義は不明瞭なものではなく、明確であるべきです。明確であれば、共創におけるステークホルダーは必要とされる目的や意図を共有することができるでしょう。まずお互いに望む成果が定まれば、チームは思いも寄らぬことを成し遂げることができます。調査に回答した一人が次のような意見を述べていました。「適材者たちが同じ目標を掲げ、士気を高め合い、励ましあいながら共に達成するというコミットメントをもって取り組むことができれば、驚くようなことが起きるかもしれません」。
正しくプロセスを定める:フレームワークを活用する
共創のプロジェクトにおいて正しいプロセスを特定することで、ステークホルダーが確実に効率的で効果的な取り組みができるようになります。お互いに望む成果を目標にするチームを持つだけでは不十分です。行動指針を示すような根本的なプロセスがなければ、フラストレーションが蓄積し、そのプロジェクトは問題に陥ってしまいます。
フレームワークを選ぶプロセスは、以前に紹介した共創の5つの型(シンクタンク/ブレインストーム、クラウドソース、オープンソース、マス・カスタマイズ、ユーザー生成コンテンツ)を選択することから始まります。
共創のリーダーが最適な型を決定した後は、さらに実務的に考慮すべき点を踏まえて包括的なフレームワークとプロセスを示します。これには、チームメンバーの明確な役割と責任の決定、説明責任の仕組み、共創プロジェクトの状況や背景などを明確にし、さらに無意識の偏見を軽減することも含まれます。
調査回答者の中の数名は、正しいプロセスを経ることの重要性を証言する人もいました。「プロジェクトに関わる全員が、ある程度具体的な役割責任や結果責任を負うべきであり、全員が意見を求められるべきです」。他にも、「成長のためのしっかりとしたフレームワークが整えられていること」、そして「設定されたタスクや期限、フォローアップやプロセスの進捗に責任を持つ担当者を明確にすることが必要だ」とその重要性を述べた人もいました。
プロセスは、詳細なレベルで明確にされることが望まれます。例えば一人の回答者からは、「製品開発においては、レビュー会議を毎日行うことで、開発のプロセスを綿密に注視することに役立ちました」という返答がありました。別の回答者は、「各メンバーにプロセスの一部の責任を持たせて、その担当箇所を間違いなく次の段階に移せるようにします。後戻りすることのないようにすべきです」だと助言してくれました。
正しくコミュニケーションを取る:オープンコミュニケーションに努める
オープンなコミュニケーションは、共創を成功させるために極めて重要です。これは社員や顧客、取引先、会社に関わる他のすべてのステークホルダーにとっていえることです。明瞭なコミュニケーションがなければ、仮に誰もが熱意をもって全力でプロジェクトに取り組んだとしても共創は失敗します。調査回答者の多くが、正しいコミュニケーションの重要性を強調しています。「コミュニケーションが不可欠です」と。
「あなたが社員と良いコミュニケーションが図れば図れるほど、あなたの会社は成功する」と言っても過言ではないと私は思います」
「それぞれの考えが自由に言い合えるような会社であれば、計り知れないほどの成長が待ち受けています。私は、担当者が自分のアイデア以外の考えには、耳を貸そうとしないような会社にいましたが、そこには何の成長もありませんでした」
「(共創は)あらゆる段階においてアイデアを適切に発展させるためには、明確で十分なコミュニケーションが必要です」
「組織がより大きくなればそれだけ、戦略や目標についてのコミュニケーションが不足し、その結果、方向性を見失うことになります」
回答者の中でとても記憶に残ったのが、「みんなが同じ楽譜で歌うこと!」というもの。確かに、どれだけ全員が一生懸命に歌ったとしても、それぞれが別の歌を歌っていたのでは、悲惨なものになります。
正しく実行する:聡明なるリーダーシップを発揮する
例え、焦点を正しく合わせる、プロセスを正しく定める、コミュニケーションを正しく取るといったこと全てが整ったとしても、組織が正しくそれらを実行できなければすべて無意味です。共創のリーダーたちは、メンバーを信頼して任せ、実行させるための土台を築く必要があります。この最後の理解をもって、リーダーはステークホルダーに信頼して任せながら明確なプランを立てて、実行に移さなければなりません。
もし、共創イニシアティブの実行が不十分だった場合、プロセス全体が危機に陥ります。ある回答者は、「学生時代のちょっとした冗談なんですが、もし私が死んだら、グループプロジェクトを一緒に取り組んだ仲間たちに私を棺の中に移すのを手伝ってほしいと言っていました。そうすれば、最後にもう一度私をがっかりさせることができるよ」と皮肉っていました。正しく実行することで、ステークホルダーの士気は上がり、実行できなければ失望が大きくなります。
自分が所属する組織で共創を実践したいと思う人は、これら4つのことそれぞれについて理解し、それぞれの要素がお互いに深く関係しているということを知っておく必要があります。共創は、これら重要な4つの全てが整い、効果的に機能して初めて成功します。4つの要素を一度マスターしてしまえば、あなたの思い通りの共創へ向かって順調に進んでいくでしょう。
訳=川崎あゆみ