皆さんの中には、「また目標設定の話?つまらない!」と思っている人がいるかもしれません。でも、退屈だと感じるのは、同じ話を何度も聞いているからです。とはいえ、繰り返しなしに、素晴らしい成果は生まれません。たくさん本を読み、たくさん実践し、目標について深く理解することが、営業活動において「目標設定」をルーティン化し、営業のプロたちにとってのモチベーションとなり、行動の指針にもなるのです。
私たちの人生は、意識的にしろ、無意識にしろ、願望によって方向づけられ、突き動かされています。その願望が集約されて、私たちの将来のビジョンになっていきます。例えば、10キロ体重を落として、アスリートのような身体になるとか、継続的に1万ドルのコミッションを稼いで裕福になるといった到達目標によって方向づけられるものもありますが、具体的な行動目標こそが、私たちをそこへ導いてくれます。日々の細かな行動の一つひとつを、達成すべき重要な行動目標としてとらえましょう。その小さな行動の積み重ねが、やがて力となり、大きなビジョンを現実に変えてくれるのです。私たちの夢は、自分自身への疑いや他人への不信、そして周囲で起こる出来事によって、簡単に脱線してしまいます。だからこそ、そのビジョンを生かし続ける唯一の方法は、目に見える形にし、目標に向かって行動へと変えていくことなのです。
多くの目標達成プランでは、自分の計画に他の人に関わってもらう必要があります。このときに必要なのが、「人と人とのセールス」という考え方です。ここでいうセールスとは、自分が持っている何かを差し出し、その代わりに相手が持つ何かを提供してもらうために、相手に働きかけることを意味します。従来のセールスの考え方では、買い手が自分のお金と引き換えに、私たちの商品やサービスを受け取るという構図になります。でも実際には、私たちは誰もが絶えずセールスをしています。例えば、初デートで自分を良く見せようとしたり、自分の信念や知識を伝えたりすることもその一つです。そのセールスがうまくいけば、その努力の見返りとして楽しい夜のデートができたり、人から認められたり、自分なりの満足感を得るといった目標を達成できるかもしれません。
セールスを成立させるための理想的な環境を整えるということは、例えば、初デートに花束を持っていくことや、通り掛かりの人が店内を覗いてみたくなるようにショーウインドウを美しくディスプレイすることかもしれません。あるセールストレーナーはこう言っています。「あなたの目標は、あなたの顧客があたかもロールスロイスの納車を待つVIPの気分にさせる舞台を創ることです」と。セールスの過程は、非常に社会的な活動です。課題を解決したいという買い手の目的と、会社の目標を達成し、収入を得ながら、同時に顧客の役に立ちたいという売り手の複合的な目的が、一つの過程の中で、組み合わさっています。この目標達成という技術の学びに終わりはなく、セールスの達人にとっても終わりのない挑戦なのです。
『Masters of Sales』という本の執筆中、ジョアン・フレッチャーという女性から手紙が届きました。そこには、ある大成功を収めた若いセールスパーソンについて、興味深い話が書いてありました。彼は販売優秀で数々の賞を受け、角部屋のオフィスを与えられ、そして人を惹きつけるカリスマ性も備えていました。それでも彼は、自分はまだ成功の表面をなぞっているにすぎないと感じていたのです。
彼はきちんと目標を紙に書き出していたにもかかわらず、彼自身の満足度は低いものでした。それが変わったのは、成功の全体像とは、単にいくら稼ぐのか、大きな家に住むのか、何件の成約を取るかではないことに気づいたときでした。彼にとっての全体像とは、人生全体を通じて自分が本当に何を成し遂げたいのかを描いたビジョンだったのです。この気づきを得てから、彼の新たな売上目標は、娘の教育資金を積み立てることや、息子のサッカーリーグのコーチを手伝う時間や自宅の庭仕事をする時間を作ることに直接結びつくようになりました。以前よりも個人的な目標が増えたにもかかわらず、彼の営業成績はさらに伸びていきました。
覚えておいてほしいのは、仕事の目標、セールスの目標、そして人生の目標はすべてがつながっていて、常に影響し合っているということです。ここで、あなたにお聞きします。あなたが人生全体を通して、本当に達成したいことは何でしょうか?そして、そのビジョンに向かって前進するために、仕事・セールス・人生の目標をスムーズに推し進めていく上で、意識して取り組めることには、どんなことがあるでしょうか。ぜひ、あなたの考えを聞かせてください。
訳=川崎あゆみ