あなたのビジネスにおいて、共創の助けをもって改善できないものはありません。共創は単なる協力よりも、さらに一歩進んだものです。新著「The 3rd Paradigm(第3のパラダイム)」の中で、共著者であるハイディ・スコット・ジュスト博士とダワ・タルヒン・フィリップス氏、そして私は「共創とは、異なる関係者を集めて、お互いに望んでいる成果をベースに置いて、実際に商品やサービスを生み出し、改善し、カスタマイズすること」だと述べました。この本の抜粋の中で、私たちは共創を5つに分類し、それぞれが同じ志を持つ起業家や事業家にもたらすものについて述べています。
共創の5つの型
共創は従来のビジネスモデルと異なります。これについては、後述する2000年の『ハーバード・ビジネス・レビュー』の記事の中で、経営学のC.K.プラハラード教授とヴェンカット・ラマスワミ教授が伝統的な劇場と比較しています。
事業競争は、かつては伝統的な劇場によく似たところがありました。つまり、ステージ上では、役者はそれぞれの役が明確に決まっており、来場者はチケットを購入し、席に座って観劇するだけです。ビジネスにおいては、メーカーや販売代理店、卸業者は取引関係の中で各々の明確に定義された役割を理解し、その役に徹していますが、現在は、その状況にも変化があります。ビジネスは、むしろ体験型劇場のようなもので、誰もがその一部になれるわけです。
これが、共創の魅力的な部分です。つまり、常に共に取り組むという点ですが、解決策を誰と一緒に生み出すか、どのような他のステークホルダーを関与させるかによって、あなたが取り組むことができる、または取り組みたい共創の型が決まります。
全ての組織と同じ様に、共創も特有の制約や課題があることは認識しておくべきです。我々の調査において最も言及された課題点は、人と人との衝突やエゴにどのように対処するかということでしたが、キッチンにシェフが何人もいる場合、これは珍しい問題ではありません。
世界的なイノベーション企業であるボード・オブ・イノベーション社は、特にBtoBの関係性においては次に述べるような6つの障壁も指摘しています。それは、コスト、時間、リソース、生産量、独創性そして変化への恐れです。共創には、計り知れない可能性がありますが、同時にリスクもはらんでいます。あなたのビジネスに適した型の共創を選択することは、課題を克服するための重大なステップです。
ここでは、共創の5つのタイプあるいはフレームワークに注目します。それは、あなたを目的地に導いてくれる可能性のある5つの異なる道筋に例えることができます。どの道を選ぶかは、あなたの旅にとってどれが最適な道だと考えるかにかかってきます。
共創の型の中には、他の型よりもよく知られており、一般的な人々に馴染みのあるものがあります。共創の多くの型は、目に見えるような形で行われていますが、共創の活動であることを認識できる訓練をしていなければ、昔からあるビジネスモデルとよく似ているように感じるかもしれません。しかし実際には、根本的に違うものです。
5つの型を理解する
以下が5つの型になります。
シンクタンク/ブレインストーム: グループや企業が、新しい解決策を見出したり、商品やサービスを開発するために、専門家やサプライヤーあるいはビジネスパートナーを含めた多くの人員を集めます。場合によっては、顧客が「生産」の一部を担うこともあります(例:顧客が自分で運んで組み立てる平箱包装の家具、スーパーマーケットのセルフレジ、空港のセルフチケットカウンターなど)。
クラウドソース: 多くの人々(多くの場合はボランティア)が、ウェブ上のクリエイティブなツール(例:ウィキペディア、キックスターターなど)を使って、商品やサービスを一緒に創ります(多くが無償)。このような共創の形は、創造性の質を向上させることにつながる可能性があり、これもまた我々の調査で言及された共創の利点の一つでもあります。
オープンソース: グループや企業が自社のイノベーションの課題に取り組んだり、データ蓄積に協力してもらうために(例:非営利団体オープンサイエンスセンターやリサーチゲート社)、内外の専門家を多数招きます。これによって、多くの調査参加者に当事者意識が生まれ、リソースを共有したという感覚を持つ状態につながることがあります。
マス・カスタマイゼーション: グループや企業が、顧客の希望に合わせて個別にオーダーされた商品を大量生産します(例:自分の写真がプリントされたTシャツ、自分の好みに合わせたVansのシューズ、カスタマイズされたバッグ)。数千人の起業家を対象にした調査では、アイデアの多様性を共創の大きなメリットとする意見が多く挙げられました。
ユーザー生成コンテンツ: あるグループや企業が、一般の人によって公開された知識やコンテンツ(例えばオンラインに投稿された情報)を活用しています。ネット上には、他の人が投稿した情報(ブログやフォーラムでの顧客のフィードバック、YouTubeの動画、ソーシャルメディアのプラットフォームなど)を素早く見つけるためのさまざまなウェブツールがあります。これもまた、共有リソースにアクセスできるという素晴らしい例であり、多くの調査参加者が共創の利点の1つとして挙げています。
2つのカテゴリー
これら5つの共創の型を、2つの異なるカテゴリーに分類することもできます。
グループや企業がプロセスにおいて果たす役割に応じて:消費者個人なのか、それとも企業なのか、誰がプロセスを舵取りするかということ。
価値創出の種類に応じて:あなたの価値提供が全ての顧客が享受できる標準的な価値なのか(よりよい良質の商品やサービスを共創する)、あるいは顧客それぞれに合わせたパーソナライズされた価値なのか(個別にカスタマイズされた商品やサービスを共創する)ということ。
上記の5つの型による共創は、何かをより良くしたり、独自性のあるものを作り出すことに関連しています。独自性がそのビジネスのバリュー・プロポジション(価値提案)であれば、平均的な商品であっても、共創の価値によって得られるものを活かすことで市場において成功を収める可能性があります。もし、そのビジネスの価値提案が何かを改善することであるならば、平均的な商品であっても顧客や消費者の力を借りて改善を実現することにより成功を収めることができるのです。
そのため、共創は新興ビジネスのみならず既存のビジネスにおいても適用されるケースが増え続けています。あなたとあなたの会社では、どの型の共創がお役に立ちそうですか?
ご覧の通り、共創は価値創出の連鎖の中でさらなる価値を解き放ち、その価値をあなたや周囲の人の成功に役立てることができるのです。ひと昔前のモデルに縛られた中で価値生成を続けるのではなく、あなたが信頼する人たちと関わりながらあなたの価値を最大化することができたら、素晴らしいと思いませんか?あなたの仕事に最も関心を寄せる人たち、つまりあなたの顧客、そしてあなたの商品やサービスを利用する消費者やステークホルダーとの関係性を高め、彼らの才能や知識、スキルを活用することは有意義なことではないでしょうか。
共創の助けを借りて改善が図られなかったり、手が付けられないようなビジネスは存在しません。あらゆるビジネスのあらゆる分野において共創の力を開放し活用することで、まだ人が気づいていない手付かずの大きなスケールの価値を見出すことができるはずです。あらゆるビジネスは、共創のプロセスを受け入れ、顧客や消費者、ステークホルダーの間で同様に生み出される信頼と投資を拡大することで、より大きな成功を収めることができるはずです。
訳=川崎あゆみ