名刺収集は、ネットワーキングにあらず

2025/10/13

ネットワーキングについて、よくある大きな誤解のひとつが、とにかく会場を駆け回って、できるだけ多くの名刺を集めることだと思われていることです。こうした人たちは、ネットワーキングがあまり好きではないことが多いようですが、それでも、やらなければならないと感じており、その方法が最も効果的だと勘違いしているのです。私はそうした人たちに、それはネットワーキングではありませんと伝えてきました。それは、対面での飛び込み営業か、それよりひどい、ただの「名刺集め」にすぎません。

数年前に、ビジネス関連のネットワーキングイベントで、集めた名刺の数を競い合っていたビジネスパートナーたちに出会いました。ルールは、集めた名刺の数が一番少ない人が、その週の夕食を他のパートナーに奢るというものでした。彼らはこのネットワーキング戦略にかなり自信を持っていて、得意気にその方法を語っていました。私は彼らに、それが本当に良いネットワーキングの方法ではないことを伝えようとしたのですが、彼らには私の言いたいことが伝わらなかったと思います。

残念ながら、今でも、こうしたやり方を効果的なネットワーキングだと考えている人に出会うことがあります。拙著『Networking Like a Pro, 2nd Edition』の共著者であるブライアン・ヒリアード氏は、この問題に対して、解決できそうな案を示してくれました。

名刺集めは、バーリーにおまかせ

ブライアンには、バーリーという名前の犬がいます。バーリーは体重25キロの柴犬で、猫が苦手。見た目は、キツネにも似ています。バーリーは、よくしつけられた行儀の良い犬です。もし、あなたがイベントで名刺を集めたいけれど、名刺を集めるためだけにすべての時間を費やしたくないと思うのであれば、この方法はいかがでしょう。ブライアンから1時間20ドル(最低2時間、プラス交通費)でバーリーをレンタルして、次のイベントに参加してもらうのです。ブライアンが、バーリーの胴体に馬のサドルのようなカバンを取り付けてくれます。その片側には「ご自由に1枚お取りください」と書かれた札とあなたの名刺の束を入れ、もう片側には「ここに名刺を入れてください」と書いたポケットを用意します。

その後、ブライアンはバーリーを車でイベント会場に連れていき、彼だけを中へと送り出します。そして2時間後、名刺の束を携えたバーリーを迎えに戻ってくるのです。
バーリーはとてもよく訓練されていて、きっと誰からも可愛がられるはずです。ですから、きっと名刺の束をたくさん持ち帰ってくれると私は思います。

さて、バーリーが下げているポケットから名刺を取り出した後は、ちゃんと散歩に連れて行ってあげてください。これだけの大変な仕事を終えた後ですから、おそらくトイレに行きたくなっているはずです。とはいえ、バーリーは、本当にネットワーキングができたのでしょうか?

もちろんそんなわけはありません!名刺を大量に集めることが、どうして人脈作りになるというのでしょうか。ネットワーキングのイベントで名刺を集めることは、ネットワーキングではありません。

ばかばかしいと思うかもしれませんが、ビジネスのプロフェッショナルたちの多くが、このようなやり方でネットワーキングに取り組んでいるのです。それは、誰が最も多くの名刺を集めることができるかというゲームのようなもので、何の意味もありません。ネットワーキングのイベントで名刺を集めることは、ネットワーキングではなく、それはただの名刺集めであり、ビジネスを発展させる上で、有効な方法とは言えません。バーリーがイベント会場を走り回って、人々に彼と名刺を交換させるという状況を想像すれば、そのことがいかにナンセンスかは明らかです。

ネットワーキングイベントで誰かと出会ったら、まずは会話を交わしましょう。その人のビジネスについて、なぜその仕事をしているのか、商品やサービスがどのように人の役に立っているのかを聞いてください。その後、名刺をもらったら、必ずフォローアップしましょう。目的は、売り込むことではなく、さらに会話を重ねることです。そうすることで、お互いに有益なビジネス関係を築いていけるのです。

訳=川崎あゆみ