ビジネスネットワーキングはマラソン

2022/05/19

ビジネスネットワーキングは、まさにマラソンのようなもので、決して短距離走ではありません。私はこれまで、全力疾走でネットワークづくりに奮闘し、「超活動的なネットワーキング」を実践してきた多くの人に出会ってきました。彼らは、どこにでも現れ、誰とでも会い、わき目もふらず走り回ることで燃え尽きてしまい、当然ながら「崩壊」し、努力が報われることはありません。

活動イコール成果ではない

数年前、私は完璧なネットワーカーとして知られる女性に出会いました。彼女は何百、おそらく何千もの人とつながり、あらゆる職業・地位の人たちが集まる幅広いネットワークを持っていました。彼女は、誰もが知りたいことを何でも教えてくれる存在として、コミュニティ内で非常によく知られていました。

ある日、彼女は私を脇へ引っ張っていくと、驚きの発言をしました。彼女がそれまでにかけてきた人脈作りに対する労力は、あまり報われていないというのです。続けてこれまで関わった全てのグループ、出会った全ての人たちについて、そしてその人たちといかに良いつながりを持ってきたか、そして今もその努力を続けているということを私に話しました。でもそんなに努力を重ねてきたにもかかわらず、全くといっていいほど確かなビジネスが得られていないと言うのです。ちなみに、週に何回くらいネットワーキングイベントに顔を出しているのか聞いたところ、最低でも5回、ときにはそれ以上だというのです!

なぜ、彼女は結果を出せなかったのでしょうか。それは、彼女は人脈を作ったり、自分の認知度を上げるための能力は素晴らしかったのですが、人脈作りの本質、つまり人間関係の構築をないがしろにしていたのです。あちこち走り回り、いろんなところに顔を出すのに忙しく、せっかく作ったネットワークを「活用」して、人々と深い人間関係を築き、信用を得る方法が分かっていなかったのです。

確かに彼女はコミュニティ内で非常に目立ち、誰もが知る存在でした。問題は、彼女が人脈作りにおいて、「活動」すること自体が「成果」であると思っていたことです。実際に、彼女のネットワークは非常に幅広いけれど、浅いものでした。彼女はその広い範囲に及ぶネットワークにいる多くの仲間に対して、次の、最も重要なステップを踏んでいませんでした。つまり、仲間たちが彼女のことをよく知り、好きになり、信頼し喜んでリファーラルを出せるような親密な関係を築くために時間をかけていなかったのです。

ネットワーキングとは人間関係を構築すること

最近、数年来の知人でも同じことがありました。彼は、参加できそうなありとあらゆるネットワーキングミーティングやイベントに継続的に参加し、彼の存在は信じられないほど目立つようになりました。いつもミーティングに参加するだけではなく、会場に到着してからその場を去るまでの間、終始エネルギッシュで熱意に溢れていたのですが、問題は、自分の身をそこに置いて、人と新しく知り合うための行動や努力、熱意が足りなかったということではなかったのです。

彼はただ忙しく走りまわるだけで、継続的にお互いにリファーラルを出し合えるような、長期にわたって根を張った関係を構築するためにしっかりと時間を費やせなかったことが問題だったのです。その結果、彼は重度のネットワーキング燃え尽き症候群となってしまいました!可能な限りあらゆるところに行き、誰とでも会っていた彼が、どこへも行かずほとんど誰とも会わなくなり、1年後には彼のビジネスは行き詰まってしまいました。

ネットワーキングは狩猟型ではなく農耕型

できるだけ多くの人脈を作ることで、ビジネスを大きく成長させることがあなたの目標であれば、強力なネットワーク作りはできないでしょう。ネットワーキングに短距離走で臨めば、ほぼ間違いなく燃え尽きてしまいます。イベントからイベントへと絶えず飛び回っても、疲れるだけで効果はありません。人脈作りにおいては、あなたの存在を知ってもらうこと、そして信頼性を高めるという両面のバランスが必要となります。

そのためには、これまでに知り合った人たちと定期的な1to1(個別)ミーティングを行い、相手が提供するサービスや良いリファーラルを出すにはどうしたら良いかをより深く理解することも1つの方法です。そして、その相手もあなたに同じことをしてくれるということが非常に大切なことです。

そのいい例として、カリフォルニア州で不動産業を営む女性が、過去に深刻な不況に見舞われたときでも、彼女がある場所でネットワークを広く深く構築しようと決めたことで、ビジネスが劇的に成長したことを話してくれました。

私のアドバイスに従って、自分のネットワークの仲間と少なくとも月4回の1to1ミーティングを行い、そこで関係構築に集中しました。そして、彼女の仲間にとってビジネスチャンスになると確信したので、その場で仲間に電話し、2人を引き合わせたのです。その結果、ビジネスにつながる強力な紹介が生まれました。

この活動によって、彼女は仲間たちに以前よりも倍のリファーラルを出せるようになり、そして何よりも、彼女もこれまでより倍のリファーラルをもらうことになりました。彼女は、この人脈づくり、信頼関係構築のプロセスを短距離走ではなく、マラソンを走ることだととらえたのです。まさにネットワーキングが農耕型であり狩猟型ではないことを示すいい例です。人脈作りは、キーパーソンとの関係づくりが重要なのです。

この話で驚くことは、ビジネスが深刻な不況に直面し、そのあおりを受けていたときに起きていたことだということです。さらに重要なことは、このビジネスウーマンの職業が、多くの他の職業と同じか、それ以上に大きな打撃を受けていたことです。そのような境遇にもかかわらず、彼女は長期的にリファーラルを出せる関係を作り出すために関係構築のスキルを駆使したのです。

ビジネスネットワーキングの核心は、時間をかけて本物の信頼できる関係を築くことです。もちろん、認知を上げることも重要です。でも信頼関係がなければ、長期的に見て、認知を上げるだけでは大きな成果を上げることはできません。ネットワーキングは、短距離走ではなくマラソンに挑むように取り込むことです。

ネットワーキングにおいては、時として急ぐからこそスピードを落とすべき時もあります。

 

訳=川崎あゆみ