長年にわたって、自分の子どもたちにも伝え、ビジネスパーソンの指導にも活かしてきました。特に、「自分は、まだ足りていない」と感じているとき、例えば、成功が足りない、まだ十分に成長できていない、周囲の人ほどの能力がないと感じているときです。そうした人たちと会うたびに、ほとんど毎回、同じ共通のパターンが見られるに気づきます。それは、みんな、自分の内側と誰かの外側を比べてしまっているということです。
どういうことでしょうか。私たちは、迷いや不安、焦り、失敗など、自分の内側については、すべてを知っています。でも、他の人について見ているのは、その人が見せようとしている部分です。私たちは、ありのままの自分の人生と他の人の人生の、リール機能で強調されたシーンとを比べているのです。それは、不公平な勝負ですし、ほとんどの人が負けてしまいます。
なぜ人は比べてしまうのか
これは、人間の生まれもった本能の一部でもあります。私たちの脳は、他の人と自分を比較するようにできています。それは、
集団やコミュニティ、グループ、チャプター(BNI)での自分の立ち位置を把握するためです。ただし、現代における“集団”には、印象操作されたインスタグラムのフィードや、洗練された自己演出、見せ場だけを切り取った動画が含まれています。
他人の投稿の多くは、人生の“最も良く見える部分”を意図的に磨き上げ、どのように見られるかを意識して整えられたものです。私たちは、そのことを忘れてしまいがちです。休暇中の様子や仕事での成果、成功した姿は見せますが、涙や眠れない夜、失敗、苦悩は、ほとんど見せることはありません。私たちがSNS上で目にしているものは、現実のすべてではなく、公に見せている姿はマーケティングに過ぎません。
その一方で、自分の心の中のことは、すべて見えてしまいます。そこには、自分たちの不安を現実以上に大きく鋭く、現実以上にリアルに感じさせてしまう感情的な盲点があります。自分に対する批判の声は、大きく響くのに、他人が抱えている苦しみは私たちにほとんど聞こえてきません。
そして、いわゆる生存者バイアスと呼ばれる認知の偏りもあります。私たちは、まだ模索している人たちよりも、うまくいっている“勝者”にばかり目を向けがちです。このバイアスによって、自分以外のみんなは、すべて順調にいっていると思い込まされてしまうのです。実際に私も多くの人から、「あなたは、すべてを理解し、うまくやっている人だと思っていました」と言われますが、思わず笑ってしまいます。なぜなら私自身も、ほかの人と同じような課題に向き合って、悩んでいるからです。人は、私の内側ではなく、外側だけを見ているのです。
比べることの代償
私は、比較は、喜びを奪うものだと考えています。誰かの完璧に整えられた外側の世界と、自分の混沌とした複雑な舞台裏とを比べてしまうと、現実がゆがんで見えてしまいます。その結果、次のような結果を招きます。
・身動きが取れなくなる
・リスクを取ることや、新しいことを始めることへの恐れ
・自分の進歩を認められなくなる
・インポスター症候群(実力があるのに自分を過小評価してしまう)
みんなの生活は、そんなにバラ色の夢のような世界ではありません。今の場所にたどり着くまでに、誰もが多くの困難を乗り越えてきていることを覚えておきましょう。
自分の内側と他人の外側を比べないために
1.視点を変える
「なぜ私は、あの人がいる場所にまだたどり着けていないのだろう」と問いかけるのではなく、「その人の歩みから、私は何を学べるだろう」と考えてみましょう。羨ましさを学びに変えるのです。他の人の進歩に心を乱されるのではなく、その歩みから学び取りましょう。
2.感謝を実践する
感謝の気持ちは、足りないものではなく、すでに手にしているものへと意識を向けさせてくれます。その日にあった良かったことを、大きなことでも小さなことでも構いませんので、書き出してみましょう。私は、感謝には人を変える力があると信じており、できる限り実践しています。
3.取り入れる情報を選ぶ
特定のSNS投稿があなたに劣等感を抱かせるのであれは、見ないようにしましょう。自己評価を下げてしまうようなコンテンツを取り込む必要はありません。コロナ禍では、「ニュースを見過ぎないようにしよう」と言うようになりましたが、今でも、本当にそう思っています。ニュースは、事実そのものよりも、ニュースに関する意見の方が影響力を持つようになっています。ですから、あなたの価値を損なったり、世界に対して恐れを抱かせるような情報は、取り込まないようにしましょう。
4.文脈の原則を忘れない
あなたは、自分の物語のすべてを知っています。一方で、他人については、その人の見せたいシーンしか見ていません。他の人に向けているのと同じ寛容さを自分自身にも向けてください。忘れないでください。あなたにも輝いている瞬間があります。ただ、あなたが舞台裏でどんな葛藤してきたのかを、他の人は見ていないだけなのです。
5.自分のレースを走る
人生は、短距離走ではなく、マラソンです。あなたが打ち勝つべき唯一の相手は、昨日の自分です。自分のレースを走り、昨日の自分よりも成長していきましょう。
重要なポイント
ここで意識しておきたい4つのポイントです。
- あなたの舞台裏と誰かの見せたいシーンを比較するのはやめましょう。
- 他の人が見せているものは、多くの場合、演出された姿であり、現実ではありません。
- あなたの内なる声には、誰かの内側の葛藤は聞こえていません。聞こえていないからといって、「ない」と思い込むのはやめましょう。
- 本当に大切なのは自分の成長だけです。
あなたの物語は、いまも書き続けられている最中です。追い越すべき相手は、昨日の自分です。だからこそ、自分のレースを走ってください。あなたの内側の歩みは、誰かの外側の華やかなショーよりも大切です。SNSに投稿された誰かの加工された写真と、自分の人生を比べるのはやめましょう。インスタグラムでどれだけ写真を加工しても、人生を贖うことはできませんし、ハッシュタグが、夜にあなたを支えてくれるわけでもありません。自分のレースを走ってください。その途中でも、笑うことを忘れないでください。そして、どれほど輝いて見える瞬間でも、その裏には、失敗やNGシーンがあるのです。
この記事は、Dr.アイヴァン・マイズナーによる「Comparing Our Inside to Other People’s Outside」を翻訳したものです。
原文:https://ivanmisner.com/comparing-our-inside-to-other-peoples-outside/
翻訳:川崎あゆみ