「スピードを上げること」と「ゆっくり進むこと」にまつわる、昔からよく知られたエピソードがあります。エアバス380が大西洋上空を、時速800km・高度3万フィートで安定飛行していました。すると突然、マッハ2で飛ぶユーロファイター戦闘機が横に現れました。
戦闘機のパイロットは速度を落とし、エアバスと並ぶように飛びながら無線で呼びかけました。「やあ、エアバスでのフライトは退屈でしょう?ちょっと面白いものを見せてあげよう!」
戦闘機は機体を反転させ、そのまま加速して音速の壁を突破。スリリングな高さまで急上昇し、今度は海面すれすれまで急降下します。アクロバティックな飛行を終えると、再びエアバスの横へ戻り、誇らしげに聞きました。「どうだい、今のは?」
エアバスのパイロットは落ち着いた口調で、感心しながら答えました。「とても見事だったよ。では、今度はあなたが見る番だ」
戦闘機のパイロットは、エアバスが速度を変えず、一直線に飛び続ける様子を注意深く見守ります。特別な動きは何もありません。15分ほど経った頃、エアバスのパイロットがユーモアをにじませて無線で言います。「さて、どうだったかな?」
目の前で何が起きたのか理解できず、戸惑った戦闘機のパイロットは、聞きました。「いったい何をしたんだ?」
エアバスのパイロットは陽気な笑い声とともに、こう答えたのです。「いやぁ、ちょっと空き時間を有効に使っただけさ。席を立って足を伸ばして、機体の後方にあるトイレまで行ったよ。それからコーヒーを一杯淹れて、チョコレートファッジのペストリーをゆっくり味わったんだ。」
この話の教訓は、若い頃はスピードへのスリルやアドレナリンの高揚感が魅力的に思えるかもしれないけれど、年齢を重ねて、知恵を得ると、快適さや心のやすらぎに大きな価値があると気づく、ということです。 この概念はしばしば、S.O.S.: Slower, Older, but Smarter(老いてなお賢く)と呼ばれます。ゆっくりと進むことの価値を理解している読者の皆さんへ、このメッセージを贈ります。
この記事は、Dr.アイヴァン・マイズナーによる「Slowing Down or Speeding Up」を翻訳したものです。
原文:https://ivanmisner.com/slowing-down-or-speeding-up/
翻訳:川崎あゆみ