感謝する態度

2024/02/19

人は「感謝する態度」という言葉を耳にしたとき、たいてい「ああ、あれだね。また流行りのにわか心理学だ。客観的かつ確実な事実は、いったいどこに?」と考えるかもしれません。もちろん、確固たる事実が重要であることには、私も同意します。その重要性を証明するために、感謝することが人間の心理に良い影響を及ぼすことについて説得力を持って論じている信頼性のある情報源を紹介しましょう。

感謝することのメリット

  • ハーバード・メディカル・スクールを含む複数の調査研究では、感謝の気持ちを表現する人は「より楽観的で、人生を楽しんでいる」と報告されています。
  • テンプルトン財団の研究では、「感謝する態度」は実際に「脳への持続的な好ましい効果」を示すとしています。イェール大学感情知性研究センターが発表した論文では、「感謝を伝えることで、人とのつながりは相手とつながっているという感情が深まる」としています(それは関係構築において非常に重要だと私も思います)。
  • 神経科学者でさえ、感謝することは効果的であると主張しています。クレアモント大学院大学のポール・ザック教授は、「感謝の気持ちを伝えることは、人との信頼関係に大きく影響するということが、神経科学において明らかになっている」と述べています。特にそれが目に見える形で、相手が期待しておらず、周囲に人たちにも認識される形で直接伝えられたときは、関係は一層深まるのです。
  • カリフォルニア大学バークレー校で、感謝の手紙を書いた人と書かなかった人の脳のfMRI撮影を行い、画像を比較しました。この調査で、感謝の手紙を書いた人は書かなかった人より内側前頭前皮質が大いに活性していることがわかりました。内側前頭前皮質は、脳におけるさまざまな役割がありますが、脳の機能が低下するとニコチンや薬、アルコールへの反応を抑制できなくなる部位であるといわれています。言い換えると、感謝の気持ちを表すことで、内側前頭前皮質が活性化されるため、薬物やアルコールを使用しなくても自然な高揚感を生じさせる健康的な方法であることが証明されています。
  • フォーブス誌に掲載されたシセログループの研究によると、感謝を受けた人は新しいアイデアや取り組みを生み出す能力が33%、業務成績も22%が向上。人への感謝が日常的に行われていない企業で働く人よりも組織への定着率が高いとのことです。

心理学についてはこのくらいにしておきましょう。感謝は、人の態度や人とのつながり、そして仕事の結果も改善させます。これは、単なるニューエイジのトレンドではなくむしろ科学だといえます。

感謝の気持ちを持つことから出発し、その道中で人々に感謝を示すときに、感謝の効果は表れます。これは、日頃当たり前だと思っている良い事をあらためてじっくりと見つめ、認識することが大切だということを意味します。その他多くの成功の原理がそうであるように、それは単純なことではありますが簡単なことではありません。ありふれた概念のように思えても人生に常に当てはまるようなわかりやすいものではないのです。何が間違っていて、何があなたを悩ませ、あなたは何が嫌いで、どんな問題に直面するのかなど、否定的な側面に意識を向けることは簡単ですが、ポジティブで感謝の気持ちを持ち続けることは容易ではありません。

解決策にフォーカスする

私が長年にわたり学んだことは、あなたが問題に目を向けていると、問題についての世界級のエキスパートになってしまい、あなたの周りにある問題にどっぷり浸かってしまえば感謝の気持ちを表すことは難しくなってしまうということです。しかし、あなたが解決策に目を向けているのであれば、あなたは問題解決の世界的なエキスパートになれるはずです。このプロセスは、今、私たちの周りにある感謝すべきことを認識するところから始まります。その出発点から私たちは、解決策や良い点、問題解決に寄与する要素に感謝することができます。さらに個人的にせよ、職業上にせよ努力している人たちに対して感謝するということを始めることができます。感謝の効果は、一生の長い旅が必要で我々の感謝する能力を高めさせていくということなのです。

感謝は、人とつながっているという感情を満たします。今日からこれをどのように始めるのかを以下に紹介しましょう。我々は人生において多くの人に助けられていますが、その人たちは「私たちのストーリー」の登場人物です。彼らに感謝していますか?ありがとうと言っていますか?あなたに対して影響や変化をもたらしたことに感謝し、その感謝を相手に伝えていますか?

私は、ある女性から16歳の息子さんがほとんど学校に行かなくなったという話を聞きました。彼は成績も悪くなり、お酒を飲み始め、最悪なことに他人の車を盗んで深夜に乗り回しているところを逮捕されたそうです。息子さんは明らかに誤った人生の選択をしており、彼女はどのように対処すべきか心配でならなかったと私に話しました。

彼女は、息子さんの人生を新たな方向に導くことができたらという思いで、彼をあるリーダーシップ研修会議に参加させることを決めました。最初彼は「行かない」と言ってましたが、学校の休みが近くなってきた頃、それが母親にとって重要なことであれば、「お母さんのために行くよ」と言ったそうです。

数日間の研修会議に参加し、帰宅した彼は、母親に研修は素晴らしかったと話したそうです。彼は、大切なのは人であり、決断することであり、身の回りにいる人であることを学んだのです。彼女は、そのイベントの一人の講演者が特にこの若者に大きな影響を与えたと教えてくれました。それから、彼女はそのイベントの講演者に連絡を取り、このことを伝えました。講演者であるその人の話が息子さんの人生に与えた影響を話し、「あなたが息子を取り戻してくれた」と感謝の意を伝えました。その講演者は大いに感動しこの若者にビデオメッセージを送り、自分の話がこの若者の役に立ち、僅かながら貢献できたことに誇りを感じたということを話しました。さらに、この若者はこの講演者に返事をし、彼自身が築いている人生について少し話をしたそうです。

このストーリーは、感謝の効果は大きな努力も必要なく、ほとんどコストもかからないということを気付かせてくれます。しかし、あなたやあなたの周りにいる人に、とても大きな影響を与えることもわからせてくれます。このように人に感謝の行動を行えば、人は磁石のようにあなたに引き寄せられます。これは、人間関係構築のプロセスを推し進めるものです。上記のストーリーが示すように、感謝の効果は巡り巡って、新しく影響力の強い方向にらせん状に広がっていくことがあります。それは科学的にも証明されていることなのです。

訳=川崎あゆみ